山頭火の不思議な1句

夏石番矢編『山頭火俳句集』(岩波文庫)が完成して、その巻末の解説文「水になりたかった前衛詩人」で触れられなかった不思議な魅力に満ちた1句に言及しておきたくなった。

昭和9(1934)年
同文庫111ページ5句目。

  あかるくてあたゝかくて王様うごけなくなった  山頭火

11・4・8の3句節。

「あかるくて」(5)/「あたゝかくて」(6)//「おうさま」(4)///「うごけなく」(5)/「なった」(3)

というリズムと言ったほうがいいかもしれない。

最初の2句は繰り返しに近い表現であり、漸奏法。次の「おうさま」で声調が高まり、大きな強調と停止が置かれる。次の2節句は大団円の結末。内容にふさわしいリズムがここに展開している。


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意味の展開を図示すると、上のようになる。太い部分は強調。

同年の春に作られた一句で、「あたゝかく」は季語ではない。

ここには山頭火のひとときの幸福感が、率直に詠み込まれている。

「あかるさ」と「あたゝか」さは太陽の恵み。乞食のような身なりの山頭火は、金銀財宝がなくても、そのとき童話の「王様」のような満足感に包み込まれる。

母親のふところに抱かれた心地よさにも通じる。

放浪者が、ひととき「うごけな」いのは、体調不良などではなく、心身に充満する至福感ゆえである。


参照
夏石番矢編、岩波文庫『山頭火俳句集』手にする
http://banyahaiku.at.webry.info/201807/article_16.html
















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